世界規模で地球温暖化問題への意識が高まるなか、温室効果ガスの削減に向けたカーボンニュートラルの実現やSDGs(※)への取り組みが求められています。
なかでも住宅や施設などの建築物分野は、国内のエネルギー消費量の約3割を占めており、省エネルギー(以下、省エネ)に向けた対策の強化が必要とされている状況です。
介護施設においては、利用者が快適に過ごすための空調や給湯、照明などのさまざまな設備が常時稼働しているため、電気の使用量も増加しやすくなります。介護施設の省エネ化を進めるにあたって「どのようなメリットがあるのか」「何から取り組めばよいか分からない」といった担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では介護施設におけるエネルギー消費の課題をはじめ、省エネ対策を行うメリット、具体的な取り組みについて解説します。
※SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、貧困や格差など、世界中のさまざまな問題解決のために設定された17個の目標のこと。
出典:環境庁『地球温暖化対策計画』/国土交通省『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について』
介護施設におけるエネルギー消費の課題
介護施設では、利用者が快適に過ごすための照明や空調、給湯などのさまざまな設備が稼働しており、エネルギー消費量が増加しやすいという課題があります。
施設によって異なりますが、特に浴室がある施設は入居者への入浴介助の際に給湯設備を使用するため、エネルギー消費量が多くなる傾向があります。また、厨房がある施設の場合には、冷蔵庫や調理場の換気ファン、食洗器などの稼働にエネルギーを使用します。
介護施設は、日中稼働している“通所施設”と年中無休で稼働している“入所施設”があり、施設形態に合わせた省エネ対策が求められます。省エネ対策を進めるにあたっては、空調の温度管理や風向調整、照明管理など利用者様の快適性を考えることも大切です。
介護施設の省エネ対策に取り組むメリット
介護施設の省エネ対策に取り組むことは、環境保護に貢献するだけでなく、施設や利用者にとってもさまざまなメリットがあります。
環境保護につながる
介護施設の省エネ対策を行うことで、環境保護につなげられます。
近年、事業者に対して社会貢献や環境保全への取り組みの姿勢が問われるようになりました。省エネ対策に取り組み、介護施設内のエネルギー使用量を削減することで、地球温暖化の要因の一つとなるCO2の排出量を削減できます。
また、環境保全やSDGsに貢献している介護施設として認識されると、施設の社会的評価が高まり、イメージアップにつながることも期待できます。
光熱費を削減できる
省エネ設備の導入や節電の取り組みを行うことで、電気・ガスなどのエネルギー使用量を削減できます。これにより、月々の光熱費を削減して、介護施設における経費の負担を抑えられます。
なお、省エネ設備の導入にはコストがかかりますが、長期的な光熱費の削減によって、投資コストの回収が期待できます。
快適な施設環境をつくれる
介護施設の省エネ対策は、利用者にとって快適な施設環境をつくれるといったメリットもあります。
施設の断熱性能を高めると、冬は暖かく、夏は涼しい、1年を通して快適な空間を維持できるようになります。また、施設内の温度差を少なくすることで、冬場に起こりやすいヒートショックや、夏場の熱中症を防止できるといった健康面のメリットも挙げられます。
災害時に備えられる
災害時に備えられることも、省エネ対策のメリットです。
介護施設に再生可能エネルギー設備を導入すると、停電が起きたときに太陽光や風力などを使用して発電したり、蓄電したエネルギーを使用したりできるようになります。災害時に利用者の生活を守れることは、事業者・利用者の安心感につながります。
なお、災害時に備えるために、発電・蓄電設備が搭載されたコンテナ施設を活用して、備蓄倉庫や非常時施設として活用することも一つの方法です。詳しくは、こちらをご確認ください。
省エネ対策の具体的な取り組み
介護施設の省エネ対策には、不要な照明の消灯や空調の温度調整といった基本的な取り組みのほかにも、さまざまな方法があります。
取り組みを進める際は、現状のエネルギー使用状況を把握するとともに、日単位・月単位の目標を設定して効果検証を行うことがポイントです。
01 遮熱断熱フィルムの導入
1つ目の省エネ対策として、介護施設内の窓に遮熱断熱フィルムを貼り、断熱性能を向上させる方法があります。
遮熱断熱フィルムとは、窓から室内外に熱が移動するのを防ぐためのフィルムです。夏場の日射を遮蔽したり、冷暖房で冷えた・暖まった空気の流出を抑えたりすることで、冷暖房の効きがよくなり電力の消費量を削減できます。
大規模な工事が必要ないため、低コストで省エネ対策に取り組みやすい点もメリットです。
なお、遮熱断熱フィルムを貼るメリットや選び方は、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
02 照明器具の入れ替え
2つ目は、介護施設内にある照明を高効率照明器具(※)に取り替える方法です。
高効率照明器具を使用すると、一般的な白熱電球や蛍光灯と比べて消費電力を削減できます。代表的な高効率照明器具には、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)ライトやCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極管)ライトなどが挙げられます。
▼高効率照明器具の例
照明器具 | 特徴 |
LEDライト | 消費電力を約85%削減寿命が約40,000時間 |
CCFLライト | 消費電力を50~80%削減寿命が40,000時間以上 |
また、廊下やトイレ、浴室などの常時点灯が不要なエリアについては、人感センサー型の照明器具にして、使用時間を減らすことも有効です。
※高効率照明器具とは、従来の照明器具とは発光原理の異なる新しい照明システムで、熱がほとんど出ない冷たい照明器具のこと。
出典:環境庁 COOL CHOICE ウェブサイト『LED照明って、何がお得なの?』
03 高効率設備の導入
3つ目の省エネ対策は、介護施設の空調や換気、給湯などの設備を高効率な省エネ型設備に変える方法です。省エネ型設備を導入すると、空調や給湯器などの運転効率が高まり、エネルギーの使用量を削減できます。
具体的な設備として以下が挙げられます。
▼省エネ対策に有効な高効率設備
設備 | 内容 |
ヒートポンプ式空調 | 空気中の熱を集めて移動させることで室内を温めたり冷やしたりする少ない投入エネルギーで冷暖房を使用できる |
全熱交換器 | 排気する空気の熱を回収して、屋外の空気を取り入れる際に熱を戻すことで、換気による温度変化を抑える |
ヒートポンプ式給湯器 | 空気中から集めた熱をポンプ装置でくみ上げる際の動力を使用して水を温めるエネルギー消費を約1/3に抑えられる |
潜熱回収型給湯器 | 排気中の熱を二次熱交換器で回収して水を温める熱効率を高めてガスの使用量を抑える |
まとめ
この記事では、介護施設の省エネ対策について以下の内容を解説しました。
- 介護施設におけるエネルギー消費の課題
- 省エネ対策に取り組むメリット
- 省エネ対策の具体的な取り組み
介護施設では、施設特有の機能や生活空間を維持するために、空調・給湯・厨房などのエネルギー消費量が増加しやすくなっています。
利用者様の快適な環境を保ちつつ、光熱費の削減や環境保護に貢献するために、施設の省エネ対策を進めることが求められます。不要な照明の消灯・空調の温度調整といった基本的な取り組みに加えて、遮熱断熱フィルムの導入、高効率な照明器具や省エネ型設備への入れ替えなどを行うことが有効です。
『ケアツールIggy』では、介護施設の断熱性を高める遮熱断熱フィルムを提供しています。冬は暖かく、夏は涼しい快適な室温を維持しやすくなるほか、冷暖房器具の稼働効率を高めて、電気使用量の削減に貢献します。
また、LEDライトにも引けを取らない長寿命の次世代照明に殺菌・除菌・消臭機能をプラスした『CCFL抗菌ライト』もご用意しております。利用者様とスタッフが安心して過ごせる施設環境づくりにお役立てください。
衛生機器でコスト削減を検討されている方は、こちらからお気軽にご相談ください。