主に高齢者が利用する医療・介護施設やデイサービス事業所など(以下、介護施設)は、感染症に対する抵抗力が弱い方、または認知症によって感染対策の協力が難しい方が集団で生活する場所となります。集団生活における感染症の被害を最小限に抑えるには、日頃の予防と感染拡大を防ぐための対策を講じることが必要です。

特に対策が必要とされる感染症の一つに、“ノロウイルス感染症”が挙げられます。ノロウイルスは、冬の季節に流行しやすい感染性胃腸炎の主要な原因となっており、少量のウイルスでも人から人へと集団感染を起こすことがあります。

介護施設の担当者のなかには「ノロウイルス感染症にはどのようなリスクがあるのか」「介護施設でできる対策はあるのか」などと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

この記事では、ノロウイルス感染症のリスクと介護施設で行う対策について解説します。

ノロウイルス感染症とは

ノロウイルス感染症とは、感染性胃腸炎の一種です。一年を通して感染するリスクがありますが、主に11~3月までの冬季に流行しやすくなっています。

▼ノロウイルス感染症による食中毒の年次推移

画像引用元:厚生労働省『ノロウイルスに関するQ&A

感染経路のほとんどは経口感染となっており、主に以下のケースが考えられます。

▼ノロウイルスの主な感染経路

  • ノロウイルスに汚染された貝類や調理済みの食品を生または十分に加熱しないまま食べた
  • 人が接触する機会が多いところでの飛沫感染
  • 食品取扱者が感染しており、その人を介して汚染された食品を食べた
  • ノロウイルスに汚染された井戸や簡易水道の水を消毒が不十分な状態で摂取した

ノロウイルスに感染すると、約24~48時間の潜伏期間を経て下痢・嘔吐・腹痛などの症状を引き起こします。通常は1~2日で治癒しますが、子どもや高齢者は重症化するリスクがあるため注意が必要です。

出典:厚生労働省『ノロウイルスに関するQ&A』『高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

介護施設におけるノロウイルス感染症のリスク

介護施設では、ノロウイルスに感染した利用者の便や嘔吐物を処理した手で食品を取り扱うことによって二次感染を引き起こすケースが多くなっています。

また、接触感染だけでなく、利用者の嘔吐物を処理したり、スタッフが嘔吐したりした際に飛沫感染するケースも見られています。

免疫力が低下しやすい高齢者の場合には、下痢・嘔吐による脱水症状や嘔吐物を気道に詰まらせることによる死亡につながるリスクがあります。ノロウイルス感染症に対するワクチンはなく、治癒は輸液をはじめとする対症療法に限られるため、介護施設では集団感染を防ぐための対策が欠かせません。

介護施設で求められるノロウイルス感染症の対策

介護施設でノロウイルスの集団感染を防ぐには、平常時の予防と二次感染を防ぐための対策を行う必要があります。

平常時に実施する予防策

ノロウイルス感染症をはじめとする介護施設で流行しやすい感染症は、主に施設外から施設内に持ち込まれます。平常時から、ウイルスの持ち込みや施設内での拡大を防ぐために、衛生管理を行うことが重要です。

01 衛生学的手洗いを徹底する

衛生学的手洗いとは、消毒薬を用いた手指の消毒や、液体せっけんと流水による手洗いのことを指します。

ノロウイルスの主な感染経路は、手指・食器・介助器具などを介した伝播による接触感染とされています。介助の前後や食事の配膳前などには、衛生学的手洗いを徹底するとともに、利用者の手洗い介助を行うことが重要です。

▼手洗いで洗い残しが発生しやすい箇所

画像引用元:厚生労働省『高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

なお、ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、エタノールを含む消毒液による手指の消毒だけでは十分とはいえません。液体せっけんと流水による手洗いを基本にして、消毒液は利用者が手洗いを実施できない場合の補助として用いることがポイントです。

02 施設内の設備を清掃する

介護施設内では、原則1日1回の湿式清掃と換気を行い、環境を清潔に保つことが重要です。特に介護施設の共用部分やドアノブ・手すり・トイレ・浴室などは、次亜塩素酸ナトリウム液(※)を用いて念入りに清掃を行います。

清掃の際は、手袋やマスクを着用して、使用したモップ・雑巾などは家庭用洗剤で洗浄してから乾燥させます。また、飛沫・接触による感染を防ぐために、手に触れることを防げる設備や衛生機器を導入することも有効です。

▼衛生管理に役立つ設備や機器

  • 手動の水栓をセンサー式の自動水栓にする
  • 共用タオルを廃止して、使い捨てペーパータオル・おしぼりを設置する
  • 足踏みによって開閉するゴミ箱を導入する
  • 食堂やトイレの出入り口などのドアをなくす、または自動にする
  • 除菌・抗菌の機能が備わった空気清浄機を設置する

※次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤

二次感染を防ぐための対策

利用者や職員、面会者、委託事業者などのさまざまな人が出入りする介護施設では、感染自体を完全になくすことは難しいと考えられます。集団感染の被害を最小限に抑えるには、二次感染を抑えるための対策も必要です。

01 個室に移動させる

ノロウイルス感染症は、接触感染だけでなく、咳やくしゃみによって空気中に浮遊したウイルスによって空気感染するリスクがあります。

激しい嘔吐や水様便などがあり、ノロウイルス感染症が疑われる利用者がいる場合には、個室に移動させる必要があります。個室への移動が難しい場合には、カーテンやパーテーションなどで空間を仕切ることが重要です。

02 手袋やマスクを着用して処理する

ケアをする際に嘔吐物や排泄物、体液などに触れる可能性がある場合には、直接触れないように手袋とマスクの着用を行います。

ノロウイルスの感染者または感染が疑われる場合には、ゴーグルや使い捨てのフェイスマスク、ガウンなども併せて着用します。ケアに使用した手袋やマスクなどはそのまま再利用せずに、洗浄または廃棄してケアごとに変えることが重要です。

03 次亜塩素酸ナトリウム液で清掃する

利用者・職員の嘔吐物を処理する際は、ペーパータオルや市販の凝固剤を使用して拭き取ったあと、次亜塩素酸ナトリウム液または亜塩素酸水で水拭きをします。

ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられており、嘔吐物にもウイルスが含まれていることから、感染源となり得ます。処理をする際は、以下の点に注意が必要です。

▼拭き取りや水拭きを行う際の注意点

  • 嘔吐物の拭き取りや水拭きに使用したタオルなどは、ビニール袋を二重にして感染性廃棄物として処理する
  • 処理後は手袋・マスク・ガウンを外して、液体石けんと流水で手洗いをする
  • 次亜塩素酸ナトリウム液を使用した際は、窓を開けて換気する
  • シーツや衣類に嘔吐物が付着している場合は、軽く洗い流したあと次亜塩素酸ナトリウム液に浸けるか、85℃以上の熱湯で1分間以上消毒する

まとめ

この記事では、ノロウイルス感染症の対策について以下の内容を解説しました。

  • ノロウイルス感染症の特徴
  • 介護施設におけるノロウイルス感染症のリスク
  • 介護施設で求められるノロウイルス感染症の対策

ノロウイルス感染症は冬季に流行しやすく、感染症への抵抗力が弱い高齢者の場合は重症化したり、集団感染が起きたりするリスクがあります。

介護施設では、平常時から手洗いの徹底や清掃などを実施して施設内の衛生管理に取り組むとともに、二次感染を防ぐための対策が求められます。

ワークプレイスIggy』では、介護施設での感染症対策に役立つさまざまな衛生機器を用意しております。

▼抗菌清拭タオル製造機の『FIND』

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