私たちが暮らす環境のなかには、病気の原因となるウイルスや細菌、真菌などが存在しており、これらの病原体が体の中に入り増殖することで感染症が引き起こされます。
介護施設では、高齢者または基礎疾患があり感染への抵抗力が低い人が集団で生活しているため、一度感染症の原因となる病原体が持ち込まれると、利用者や職員を介して“集団感染”が起こるリスクがあります。このようなリスクを防ぐには、日頃から感染症対策を行うことが重要です。
そこで活用されるのが抗菌・抗ウイルスの作用を持つ製品です。医療や介護施設の管理者のなかには、「抗菌と抗ウイルスは何が違うのか」「感染症対策に活用できる製品はあるのか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、感染症対策の基本的な考え方と抗菌・抗ウイルスの違い、介護施設で活用できる製品について解説します。
感染症対策の基本となる考え方
感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が体の中に入り込み、増殖することによって引き起こされます。感染症の種類によって症状は異なりますが、主に発熱や嘔吐、下痢などの症状が現れます。
特に免疫力が低下しやすい高齢者や基礎疾患のある人は、感染しやすく重症化につながることがあります。通所・訪問型の介護サービスでは、職員を介して病原体が持ち運ばれる可能性も考えられます。
厚生労働省老健局の『介護現場における感染対策の手引き 第3版』では、介護施設の感染症対策を行うにあたって、次の3つの柱で取り組むことを重要としています。
▼感染症対策の基本となる3つの柱
- 病原体(感染源)を排除する
- 感染経路を遮断して持ち込まない・持ち出さない・広げない
- 免疫力を高めて感染への抵抗力を身につける
▼3つの柱のイメージ
画像引用元:厚生労働省老健局『介護現場における感染対策の手引き 第3版』
なかでも上記3つの柱のうち、もっとも重要な対策といわれているのが2で挙げた“感染経路の遮断”です。
病原体の感染経路には、主に空気感染・飛沫感染・接触感染の3つがあり、これらの対策に役立つのが、抗菌・抗ウイルスの機能を持つ製品です。
出典:厚生労働省老健局『介護現場における感染対策の手引き 第3版』
抗菌と抗ウイルスの違い
抗菌と抗ウイルスは、それぞれ作用が異なります。
▼抗菌と抗ウイルスの作用の違い
抗菌 | 抗ウイルス | |
作用 | 細菌の増殖を抑制して細菌を増やさないようにすること | ウイルスの数を減少させること |
また、細菌とウイルスにも次の違いがあります。
▼細菌とウイルスの区別
細菌 | ウイルス | |
細胞 | 1つの細胞を持つ単細胞生物 | 細胞を持たず生物ではない |
大きさ | 1mmの1/1,000程度 | 1mmの1/1,000万程度 |
増殖能力 | 細菌単体で増殖可能 | 単体で増殖できず、生物の細胞内で増殖する |
抗菌はあくまで細菌の増殖を抑制する作用となり、現在ある細菌をすぐに減らすものではありません。細菌を死滅・除去して数を減らす作用は“殺菌”や“滅菌”と呼ばれ、抗菌とは明確に区別されています。
JIS(日本産業規格)では、加工されていない製品の表面と比較して抗菌活性化値が2.0以下(細菌の増殖割合が1/100以下)の製品に抗菌作用を認めています。
一方の抗ウイルスは、ウイルスの組織を破壊して不活性化させることで、数を減少させる作用があります。ウイルスは細菌と異なり生物ではないため、死滅させることはできません。
抗菌製品技術協議会(SIAA)では、ウイルス活性化値が2.0以下(ウイルスの増殖割合が1/100以下)の製品に、抗ウイルス作用を認めています。
出典:厚生労働省『抗微生物薬適正使用の手引き 第一版』
介護施設の感染症対策に活用できる抗菌・抗ウイルス製品
免疫力が低下しやすい高齢者や基礎疾患がある人が集団生活をする介護施設では、抗菌・抗ウイルス製品を活用した感染症対策が行われています。活用できる製品には、以下が挙げられます。
抗菌・抗ウイルス性能を付与した加工製品
抗菌・抗ウイルスの性能を付与した加工製品は、衛生的な施設環境づくりに役立てられます。施設内の建材や職員または利用者が利用する設備などに加工製品を取り入れることで、細菌が増殖しやすい場所、手に触れる場所を衛生的に保つことが可能です。
▼抗菌・抗ウイルス加工された製品の例
製品 | |
日用品 | 使い捨ておしぼり、ごみ箱 など |
住宅設備 | 機能性壁紙・ドアノブ・便座・浴槽 など |
電化製品 | 冷蔵庫・掃除機・エアコン・空気清浄機 など |
なお、抗菌・抗ウイルスの加工製品を使用する際は、加工製品本体の清掃や消毒を行い、常に清潔な状態を保つことが重要です。
薬品・洗剤
抗菌・抗ウイルスの作用がある薬品や洗剤を使用して、介護施設内の消毒を行うことも感染症対策になります。
利用頻度や接触頻度が高い場所・モノをこまめに消毒して、細菌の増殖防止とウイルスの除去を行うことで、清潔な施設環境を維持しやすくなります。
消毒に使われる薬品の代表例には、エタノールや次亜塩素酸ナトリウムが挙げられます。また、新型コロナウイルス感染症の流行によって、洗剤に含まれる界面活性剤の抗ウイルス作用が注目されました。
2020年5月に経済産業省が発表した広報資料によると、塩化ベンザルコニウムやアルキルグリコシドなどの界面活性剤について、新型コロナウイルス感染症への抗ウイルス作用が確認されています。
▼薬品・洗剤の活用方法
- 職員や利用者の衣類・寝具、来客者の衣類にスプレーする
- ドアノブや手すり、テーブル、照明のスイッチなどを清拭する
アルコールが使用されていない天然由来成分の界面活性剤であれば、身体の清拭や口腔ケアの際に利用できるものもあります。
出典:厚生労働省老健局『介護現場における感染対策の手引き 第3版』/経済産業省『ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう』
まとめ
この記事では、介護施設の感染症対策について以下の内容を解説しました。
- 感染症対策の基本となる考え方
- 抗菌と抗ウイルスの違い
- 介護施設の感染症対策に活用できる抗菌・抗ウイルス製品
介護施設で感染源となる病原体が持ち込まれると、重症化したり、集団感染につながったりするおそれがあります。感染を防ぐには、感染経路を遮断して“持ち込まない・持ち出さない・広げない”ことが重要なポイントとなります。
細菌の増殖を抑える抗菌、ウイルスの数を減少させる抗ウイルスの作用を持つ製品を活用することで、介護施設環境を衛生的に保ち、空気感染・飛沫感染・接触感染を予防できます。
『ケアツールIggy』では、介護施設での感染症対策に役立つ抗菌・抗ウイルスの作用を持つ製品を用意しております。
▼抗菌タオル製造機(おしぼり機)FIND
抗菌力が持続するタオルをボタン一つで製造できる製品です。95℃までの温度調節とタオルの長さ・湿り度合いをカスタマイズできるため、手に触れる場所の消毒や身体の清拭などの幅広い用途にご利用いただけます。
▼抗菌液ニュークリーンスター
長時間の抗菌効果が持続する大豆アミノ酸を主成分とした抗菌液です。アルコール不使用のため、身体の清拭や口腔ケアにも使用いただけます。3~5倍に希釈すると、施設内の消毒や衣類・寝具へのスプレーによって衛生対策を行えます。
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