要介護高齢者の口腔ケアにおいて留意が必要な項目の一つに、誤嚥(ごえん)や口腔内の乾燥があります。高齢になると唾液の分泌量が減り、食べ物を飲み込む力が弱くなったり、口腔内が乾燥するドライマウスになったりして、誤嚥や口腔内のトラブルを招くリスクがあります。
このようなリスクを防ぐための口腔ケアとして挙げられるのが、唾液の分泌を促す“唾液腺マッサージ”です。唾液を分泌する器官をマッサージして唾液量を増やすことで、誤嚥やドライマウスの予防が期待できます。
医療・介護施設の管理者のなかには「唾液腺マッサージはどのような方法で実施するのか」「衛生的に行うためのポイントはあるか」などと気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、唾液腺マッサージで期待できる効果や実施方法、衛生的にマッサージを行う工夫について解説します。
出典:e-ヘルスネット『要介護高齢者の口腔ケア』『ドライマウス』/消費者庁『御注意ください、高齢者の窒息事故!』
唾液腺マッサージで期待できる効果
唾液腺マッサージで唾液の分泌を促進すると、ドライマウスによって発生する口腔機能の低下や口腔内での細菌増殖を予防することが期待できます。
口腔機能の維持・向上
唾液腺マッサージを実施してドライマウスを防ぐことによって、口腔機能の維持・向上を図れます。
▼唾液腺マッサージで期待できる口腔機能への効果
- 会話を行いやすくなる
- 摂食嚥下が促進される
ドライマウスになると、乾燥によって口・舌の筋肉を動かしにくくなり、会話や食べ物をスムーズに飲み込むことが難しくなる場合があります。
唾液腺マッサージを行い唾液の分泌を促すと、会話や食事に必要な口腔内の筋肉を円滑に使えるようになることが期待できます。口腔機能の維持・向上を図ると、誤嚥や窒息事故の防止にもつながります。
また、唾液には乾いた食べ物を飲み込みやすくしたり、食べ物の味を感じやすくしたりする働きがあります。毎日の食事を楽しむためにも唾液腺マッサージが有効といえます。
出典:e-ヘルスネット『要介護高齢者の口腔ケア』『ドライマウス』/消費者庁『御注意ください、高齢者の窒息事故!』
清潔な口内環境の維持
唾液腺マッサージは、清潔な口内環境を維持するためにも有効といえます。
▼唾液腺マッサージで期待できる口内環境への効果
- 口内の炎症や感染症の予防につながる
- 口臭・虫歯を防ぐ
唾液の分泌量が低下して口腔内が乾燥すると、口の中の細菌が増加して炎症を引き起こしたり、食事の際に粘膜が傷ついて感染症につながったりするリスクがあります。
唾液腺マッサージで唾液の分泌を促すことによって、口内の汚れを流せるようになり、炎症や感染症の予防につながります。また、唾液が持つ抗菌作用・自浄作用によって口臭や虫歯を予防する効果も期待できます。
出典:e-ヘルスネット『要介護高齢者の口腔ケア』『ドライマウス』『唾液分泌』
唾液腺マッサージのやり方
唾液腺マッサージは、耳下腺・顎下腺・舌下腺という3つの大唾液腺を指で刺激して行います。唾液腺を食事前に刺激することにより、唾液の分泌を促進できます。
01 耳下腺のマッサージ
耳下腺のマッサージでは、耳たぶの少し前にある上の奥歯あたりを刺激します。
▼耳下腺のマッサージを行う手順
画像引用元:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル ~高齢者が一生おいしく、楽しく、安全な食生活を営むために~』
- 人差し指から小指までの4本の指を耳の前の頬に添える
- 上の奥歯あたりを後ろから前へ向かって10回ほど円を描くように回す
02 顎下腺のマッサージ
顎下腺マッサージでは、下あごのラインにある左右内側の柔らかいくぼみを刺激します。
▼顎下腺のマッサージを行う手順
画像引用元:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル ~高齢者が一生おいしく、楽しく、安全な食生活を営むために~』
- 親指を下あごのライン内側にある骨のくぼんでいる部分に添える
- 耳の下からあごの下まで5ヶ所くらいを順番にそれぞれ5回ずつ押す
03 舌下腺のマッサージ
舌下腺のマッサージでは、あごの先にあるとがった部分の内側を刺激します。
▼舌下腺のマッサージを行う手順
画像引用元:厚生労働省『口腔機能向上マニュアル ~高齢者が一生おいしく、楽しく、安全な食生活を営むために~』
- 両手の親指をそろえて、あごの真下に添える
- あご中心を突き上げるようにゆっくりと10回ほど押す
唾液腺マッサージを衛生的に行う工夫
医療・介護施設で唾液腺マッサージを行う際は、利用者自身やスタッフが実際に顔に触れることになります。
目・鼻・口の粘膜は感染症の感染経路となる可能性があるため、手洗いや手袋の着用を行うとともに衛生管理を実施することが重要です。
01 おしぼりやウエットティッシュで手指や顔まわりを清潔にしておく
利用者への唾液腺マッサージを行う際は、おしぼりやウエットティッシュを用いて手指や顔、首まわりなどを清潔な状態にしておくことが重要です。
ただし、おしぼりやウエットティッシュを使いまわしたり、濡れた状態で放置したりすると、細菌の増殖や感染症の感染経路となる可能性があります。衛生的なおしぼりやウエットティッシュを使用するには、使い捨てのタイプかつ抗菌作用があるものを選ぶことがポイントです。
▼抗菌タオル製造機『FIND』(おしぼり機)
『FIND』は、高い抗菌力と肌への安全性を備えた清拭タオルを自動で製造できる機器です。必要なときにボタン一つで清潔なタオルを準備できるため、スタッフの業務負担を削減することが可能です。
また、アルコール不使用の除菌液を使用しており、唾液腺マッサージをはじめとする口腔内のケアにも安心して利用できます。
詳しくは、こちらをご確認ください。
出典:厚生労働省『介護現場における感染対策の手引き 第3版』
02 密封・消臭ができるゴミ箱を使用する
唾液腺マッサージを行う際に使用した手袋や清拭タオルを捨てる際は、密封・消臭ができるゴミ箱を使用することも対策の一つです。
一度使用した手袋や清拭タオルを放置しておくと、近くにある清潔な物品へと汚染が広がってしまう可能性があります。密封・消臭が可能なゴミ箱に捨てることで、汚染の拡大を防いで清潔な施設環境の維持につながります。
▼抗菌・消臭機能のあるゴミ箱『HOALU』
『HOALU』は、99%の抗菌・抗ウイルス機能と消臭機能を持つシートが備わったゴミ箱です。ゴミ箱内での細菌の増殖と臭いを防げるため、医療・介護施設で使用する手袋や清拭タオル、おむつの廃棄などに活用できます。
なお、医療・介護施設の感染症対策に役立つ衛生機器については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『介護現場における感染対策の手引き 第3版』
まとめ
この記事では、唾液腺マッサージについて以下の内容を解説しました。
- 唾液腺マッサージで期待できる効果
- 唾液腺マッサージのやり方
- 唾液腺マッサージを衛生的に行う工夫
高齢とともに唾液の分泌量が低下すると、会話や食事がしにくくなるほか、誤嚥、口腔内の炎症などのさまざまなトラブルにつながるリスクがあります。口腔機能の維持・向上を図るとともに、清潔な口内環境を保つには、唾液の分泌を促す唾液腺マッサージを行うことが有効です。
また、医療・介護施設で利用者自身やスタッフが唾液腺マッサージを行う際は、感染症を防ぐための衛生管理が欠かせません。手洗いや手袋の着用だけでなく、抗菌・抗ウイルス機能を持つおしぼり、密封・消臭ができるゴミ箱などを使用することが有効です。
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